相続Q&A12(遺産分割後、遺言書発見3)

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Q.遺産分割協議が相続人間で合意に達し、それに従って遺産分割した後に、遺言書が見付かったらどうなりますか?
 

A.場合によりますので、以下の前提のもとに3つのケースについて考えてみます。

 前提
 被相続人:父
 相続人 :息子A と 息子B と 娘Cの3名
 遺産  :預金(1,000万円) と 田畑(資産価値700万円)

 相続人間の遺産分割合意内容: 息子A と 息子Bが預金をそれぞれ500万円相続し、田畑を娘Cが相続する。

 遺産分割後に見付かった自筆証書遺言の内容: 娘Cに全財産を譲る

 ケース1: 遺言書の存在を相続人が誰も知らなかった、かつ 被相続人により遺言で遺産分割が禁止されている。

 ケース2: 遺言書の存在を相続人が誰も知らなかった、かつ 被相続人により遺言で遺産分割が禁止されていない。

 ケース3: 遺言書の存在をAもBも知っていたが、遺言書が存在していることをCと話すことはなかった。


 ケース3: 遺言書の存在をAもBも知っていたが、遺言書が存在していることをCと話すことはなかった

 遺言を順守すると不利になる相続人が

 その遺言書を隠匿した者と判断されれば、相続欠格者 となります。




 (相続人の欠格事由)
 民法891条5項:

 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者



 本前提でもし ABが相続欠格者に該当すると判断されれば、相続欠格者となるので

 遺言の通り、Cが全ての財産を譲り受けることになります。







 しかしながら、

 何を持って 隠匿した者 となるのでしょうか?



 ABがCに話さなかった から隠匿なのでしょうか?


 ABが、

「自分たち自身は被相続人から直接、遺言を書いたことを聞いていたから

 Cも存在については聞いていると思っていた。

 だから、Cに対して自分から遺言について話すことも無かったし、

 Cからも聞かれたことは無かったから、話すきっかけも無かった。

 遺言の内容は知らなかった。

 が、Cが分割協議に合意したので、Cも遺言よりも 分割協議を求めていたと思っていた」

 と主張しても、ABは隠匿者なのでしょうか?

 





 実は、

 遺言執行者には、 法律上の通知義務があります が、

 相続人には、 通知義務は定められていません


 
 裁判所も 上記の例のような場合は

 隠匿者として扱わないことが多々ある様です。




 そもそも


 Cが ABが教えなかった とABの不作為を追求するのではなく

 Cが 自分で遺言が無いかを探しておけばいいだけ



 というのが裁判官の考えのようです。