Q.遺産分割協議が相続人間で合意に達し、それに従って遺産分割した後に、遺言書が見付かったらどうなりますか?
A.場合によりますので、以下の前提のもとに3つのケースについて考えてみます。
前提 被相続人:父 相続人 :息子A と 息子B と 娘Cの3名 遺産 :預金(1,000万円) と 田畑(資産価値700万円) 相続人間の遺産分割合意内容: 息子A と 息子Bが預金をそれぞれ500万円相続し、田畑を娘Cが相続する。 遺産分割後に見付かった自筆証書遺言の内容: 娘Cに全財産を譲る |
ケース1: 遺言書の存在を相続人が誰も知らなかった、かつ 被相続人により遺言で遺産分割が禁止されている。
ケース2: 遺言書の存在を相続人が誰も知らなかった、かつ 被相続人により遺言で遺産分割が禁止されていない。
ケース3: 遺言書の存在をAもBも知っていたが、遺言書が存在していることをCと話すことはなかった。
ケース1: 遺言書の存在を相続人が誰も知らなかった、かつ 被相続人により遺言で遺産分割が禁止されている。
被相続人により 遺言書で遺産分割が禁止されている場合は、
その意思が優先されるので、相続人間で遺産分割協議が成立したとしても その合意は無効です。
但し、 遺言書で遺産分割が禁止されている場合であっても、
分割禁止期間は 相続開始のときから最大5年間です。
5年を超えている場合は、 相続人間で遺産分割協議で合意に達したら分割できます。
本前提は、
遺産分割協議の成立 と 遺言書が見付かった日 を明記していません。
ですので、次のパターンも考慮しましょう。
それぞれの結論だけ書きますと、
1-A 遺言書が見付かった日が、相続開始から5年経過日 以前
分割禁止期間中なので、 遺産分割協議は無効。
遺言書が見付かっているので、 全財産は娘Cが相続。
但し、息子A、息子Bは 遺留分の主張はできる。
1-B 遺産分割協議が合意に達した日が、相続開始から5年経過日 以前 かつ 遺言書が見付かった日が、相続開始から5年経過日 後
分割協議が合意に達した時点では、遺言書は存在しないものと推定されるので
遺産分割協議は有効。
遺言書が見付かった時点で、遺言の内容が優先されるべきなので
娘Cが全財産の相続を主張することは許されるので、遺産分割協議は無効。
その場合、息子A、息子Bは 遺留分の主張はできる。
但し、ABC全員が 遺言と異なる遺産分割協議の合意に異存が無ければ、
遺産分割協議は有効のまま。
1-C 遺産分割協議が合意に達した日 及び 遺言書が見付かった日が、相続開始から5年経過日 後
分割禁止期間を経過しているので、 遺産分割協議は有効。
と主張できそうです。
実はこの遺産分割協議後の遡及効については
弁護士のホームページでも、必ずこうできると断言されていないようです。
最終的には裁判官次第なのかもしれませんので、 なるようにしかならん と考えるほうが気が楽かもしれません。