自筆証書遺言が有効か無効か、効力が生じるか等は
以下の点から要件を満たすかで判断されています。
1-a.自筆証書遺言の有効要件
遺言者自身が以下の4点を自身で行う必要がある。
①遺言書の全文を自書すること。
②作成の日付を自書すること。
③氏名を自書すること。
④遺言書に自分で押印すること。
1-b.自筆証書遺言の財産目録の例外
自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書でなくともよい。
この場合、遺言者は財産目録の各頁に署名押印することを要する。
パソコン等で作成した財産目録を添付することや、
銀行通帳のコピー又は不動産の登記事項証明書等を財産目録として添付して、
遺言書を作成することができる。
2-a.自書に関する反対解釈
タイプライター、ワードプロセッサーや点字機等を用いたものは自書ではないため無効である。
テープレコーダーで録音されたものは自書ではないため無効である。
2-b.自書に関する判例1(最判昭62.10.8)
自筆証書遺言につき他人の添え手による補助を受けた場合は、
遺言者が自書能力を有し、遺言者が他人の支えを借りただけであり、
かつ、他人の意思が介入した形跡がない場合に限り、
自書の要件を充たすものとして有効である。
2-c.自書に関する判例2(最判平5.10.19)
遺言の全文、日付および氏名を
カーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、
自書の方法として許されないものではない。
3-a.日付に関する判例1(最判昭54.5.31)
日付の表示は、暦日ではなくても特定できる記載であればよい。
遺言者自身の「第何回目の誕生日」等の記載は特定できるが、
「令和6年8月吉日」は特定できず無効である。
3-b.日付に関する判例2(最判昭52.11.29)
自筆遺言証書に年月の記載はあるが日の記載がないときは、
当該遺言書は968条1項にいう日付の記載を欠く無効なものである。
3-c.日付に関する判例3(最判令3.1.18)
自筆遺言証書に係る遺言者が、
入院中の日に遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書したところ、
退院して9日後(入院中に遺言書の全文等を自書した日から27日後)に押印した場合、
当該遺言書には遺言が成立した日(押印日)と異なる日付が記載されていることになるが、
これをもって直ちに当該遺言が無効となるものではない。
4.氏名に関する判例1(大判大4.7.3)
遺言者本人の同一性が確認できるものであれば、氏若しくは名のみでもよく、
また、通称、芸名、雅号、屋号、ペンネームなどでもよい。
5-a.押印に関する判例1(最判平元.2.16)
自筆遺言証書における押印は、拇印・指印でもよい。
5-b.押印に関する判例2(最判平6.6.24)
遺言書の本文の自署名下には押印がなかったとしても、
これを入れた封筒の封じ目に押印があれば、押印の要件に欠けるところはない。
5-c.押印に関する判例3(最判平28.6.3)
花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、968条1項の押印の要件を満たさない。
6.契印に関する判例1(最判昭36.6.22)
遺言書が数葉(数ページ)にわたる場合、
その間に契印、編綴がなくても、それが全体として1通の遺言書であることを確認できる限り、
その遺言書は有効である。
7. 訂正方法に関する判例1(最判昭56.12.18)
自筆証書中の加除・変更については、
本条3項の要件を満たさないと訂正の効力が生じないのであって、
遺言そのものが無効になるわけではない。
加除訂正に方式違反があっても、
遺言書の記載自体から明らかな誤記と分かる場合には、遺言の効力に影響を及ぼさない
遺言11(自筆証書遺言:解釈)
